こんにちは、YASO蒸留家の杉川です。
こちら上越も冬の気配が漂い一段と冷え込む季節になりました。
そんな今年最後の限定品のキーボタニカルは「モミの木」。
そう、クリスマスツリーのあの木です。
冬でも緑色の葉をつけ空へまっすぐ伸びる姿から、ヨーロッパでは古くから神聖な木とされていたモミ。
去年の12月に限定品で販売したモミの評判がとっても良く、今年もキーボタニカルに採用しました。
モミの香り…と言っても、意外と想像しにくいかもしれません。
爽やかな深緑色の香り…と私は感じているのですが、表現が難しい。
冬の雪の積もった森の中で深呼吸した時のような針葉樹の落ち着いた香りが広がり、吐息からも爽やかな香りが漏れるような…まあとにかく、とっても美味しいジンなんです。
ぜひ、飲んでいただきたい杉川一押しの限定ジン。
そんな香りの良いモミは山梨県産のものを使用。
富士山の麓から届いたモミは箱を開けただけでも爽やかな香りが広がり、この瞬間からジンができるのが楽しみになります。
モミのフレッシュな香りと落ち着いた緑の香りをどちらも生かすため、今回は減圧蒸留器と常圧蒸留器の2つで香りを取り出してブレンドしています。
そんなモミに合わせるベースのジンは、今年もジュニパーベリーを増量。
ジュニパーベリーはジンのバランスを一番深いところで支えてくれている、オーケストラでいうところの低音パートのような役割だと思っているのですが、
このモミの香りはそのジュニパーベリーの低音パートと、華やかなスパイスや柑橘香の高音パートを結びつける中音域、ちょうどチェロやホルンのような存在かなと思います。
そんな中音域にスポットライトを当てた今回は、高音パートは控えめにほんのりと華を添える程度。
さらに、低音パートがしっとりとベースを響かせて全体の厚みを支えている…そんな具合でバランスを整えたジンになります。
蒸留に当たってモミの木について調べていると、アンデルセンの「もみの木」という童話があったので読んでみました。
はやく大きくなって外界に出たがるもみの木のお話しなのですが、大人でも考えさせられる内容。
総じて言うなら「“今”を楽しめるのはとても幸せなこと」なんだと、改めて気付かされるお話しでした。
そんな「もみの木」の童話の中で、外の世界に興味津々の若いもみの木が、切り倒される木をみて、
どこへ行くんだろうと不思議に思いコウノトリに尋ねるシーンがあります。
コウノトリは、「エジプトからとんでくるとちゅう、あたらしい船にたくさん、わたしは出あったのだが、どの船にもみんな、りっぱなほばしらが立っていた。わたしはきっと、このほばしらが、おまえさんのいうもみの木だとおもうのだよ。だって、それにはもみの木のにおいがしていたもの。」と答え、
その話を聞いたもみの木は海へ思いを募らせるのですが、
私は「へ〜モミの木は幹の部分もそんなに香るのか。どんな香りだろう…嗅いでみたいな」とモミの森へ思いを募らせておりました。
いつか幹も蒸留してみたい…
今回のモミの木はほんのり甘みを感じる仕上がりで、シンプルなソーダ割りもとっても美味しいのでお食事とも相性抜群。
クリスマスや年末年始のお食事に爽やかなモミのジンソーダを合わせてみてはいかがでしょうか。
12月の限定品は「モミの木」。発売は12月15日(木)からです。
おたのしみに。