こんにちはYASO蒸留家杉川です。
今月は野山の新緑の香りをギュギュッとボトルに詰め込んだグリーンなジン。
私が素材選びからレシピ作成、ブレンドまで私が担当した初めてのジンになります。
6月の担当にと、梅田部長に声をかけられたのが4月のこと。
その時点で前から挑戦してみたかった実山椒を使ったジンにしようと決めて試験器で蒸留。
YASO原酒の香りに、実山椒の爽やかな香りとじりっと舌にくる辛味が想像以上にピッタリでこれを軸にジンを仕上げることに決めました。
でも山椒だけじゃつまらないな…もっとこの季節ならではのグリーンなアロマが欲しい…
そんな思いで、山椒の葉が芽吹く頃、いつもお世話になっている新潟県柏崎市谷根のグッドグラインドファームさんへお邪魔しました。
こちらの前畑さんは、YASOの蒸留で発生した残渣物を肥料としてハーブなどの栽培をおこなっておられます。
山椒の葉と蕗と何かいいものがあれば…と伺った久しぶりの谷根は天候もよく、川には自生した薄荷が芽吹いていました。
新芽だからか去年の夏の収穫時よりもぎゅっと濃く香っていて、手についた香りがなかなかとれないほど。
前畑さんの案内で森に入ると杉の下に山椒の木があちらこちらに自生しており、その芽吹いたばかりの新芽を摘ませてもらいました。
私は富山の田舎の出身なので、田畑や実家の山で山菜や木の実を摘んでは野山を駆け回わりカエルやトカゲを捕まえている子供だったため、緑に包まれながら「こういう山の中がいちばん心落ち着く…この仕事しててよかった…」
と、しみじみとしていたら足を毛虫に刺されておりました。(3日ほど腫れていた笑)
その後、場所を変えて前畑さんの畑の片隅で蕗を摘んでいたら、ふわっと薄荷のようなゼラニウムのような香りが漂い、足元をみるとシソ科特徴を持った丸みを帯びた葉の植物が一面に茂っていました。
うわぁいい香りと調べてみるとカキドオシという日本に自生するハーブの一種。
葉っぱには見覚えがあったのですがこんなに香るのは初めて。やはり新緑の季節の香りの強さなのでしょうか。
前畑さんと一緒に「これはいいものを見つけた。使えますね。」と収穫。
木漏れ日のもとでカキドオシを摘んでいると、見上げた木々の新緑に陽が当たって輝き、
これぞ「緑さす」という景色に、リミテッド06のイメージが浮かび今回のジンになりました。
キラキラと木々の隙間や若葉に透ける陽の光が、まるで光の雨のように注ぐ様子から「フォレストシャワー」と名付け、この風景をジンで表現しようと作ったのが今回のリミテッドです。
まず蒸留所に戻ってから、摘んできた山椒の葉、カキドオシ、薄荷に私の実家で採取してきた三つ葉といちじくの葉を加えグリーンなアロマを蒸留。
そこへジュニパーベリーに少量のスパイス類を加えて蒸留したジンベースをブレンドしてテイスティングし、もう少し香り高い針葉樹の要素が欲しいなと思い別パーツとして蒸留したのが榧(カヤ)の実。
榧はイチイ科の常緑針葉高木で、その実は爽やかな柑橘感に青梅のような青みのある香りと、さらに針葉樹独特の森っぽい香りが合わさったまさに私好みな香りの木の実。
今回は去年夏に前畑さんの山で採取していた榧の実を丸ごとYASOスピリッツに漬け込み、減圧で蒸留したものを使用しました。
実は採ってきた時からこの香りに惚れていて、早く蒸留したいなあと思っていたので今回使用できて嬉しかったボタニカルのひとつ。
蒸留してみると、想像以上に香り高くグリーンかつフルーティでこのジンにはぴったりの香りでした。
さらにグリーンなアロマを引き立たせるため、へべすや柚子の果肉と黒文字を合わせ蒸留した柑橘香の強いパーツでトップとミドルノートの厚みを持たせました。
そして最後に、当初の計画だった実山椒を単体で蒸留したものを0.2%ずつ調整しながらブレンド。
野草み溢れるグリーンなアロマに柑橘系の華やかさとジュージーさ、さらに山椒の爽やかさを合わせることで、谷根の森で見た「緑さす」風景のようなジンに仕上げました。
今回のフォレストシャワーは、フィーバーツリーのエルダーフラワーで割るのが抜群におすすめです。
試飲しながら思わず笑みがこぼれちゃう美味しさだったので、ぜひお試しください。
汗ばむ季節にもぴったりな新緑のアロマに包まれて、
初夏の風や雨音を聴きながらのチルタイムなんていかがでしょうか?